【書評】 『Windows Azure Platform 開発入門』 (日経BP社)

 クラウドプラットフォームとしての「Windows Azure Platform」(以下、Azure)がリリースされてからちょうど2年。Azure は、現在も次々に新機能が追加され、バージョンアップを繰り返しています。その反面、関連技術情報がいたるところに点在していて、Azureの全体像がつかみにくくなっているのも確かです。

 今回、紹介する書籍『Windows Azure Platform 開発入門』(日経BP社)は、開発面・インフラ面の双方で総合的なスキルを求められるクラウドサービス開発者が、Azure の全体像をコンパクトにつかむ上でオススメの一冊です!(インターネットでAzure情報を探す前に、まずはこの本を読んだ方が混乱せずに全体像をつかめるはずです)

 全体は、テクノロジー単位で次の6章にわかれていますが、第2章以降は、ご自身の興味のある章から読み始めても十分読み進められる内容となっています。

 第1章 イントロダクション
 第2章 コンピューティングサービス
 第3章 ストレージサービス
 第4章 SQL Azure
 第5章 Windows Azure AppFabric
 第6章 Azure アプリケーションの管理
 
 個人的に特に読み応えがあったのが、第4章の SQL Azure でした!SQL Azure データベースだけでなく、SQL Azure DataSync、SQL Azure レポート、そして、2011/12にリリースされたばかりの SQL Azure Federation についても言及されています。SQL Azure サーバーの3台のレプリカのコミットの話や SQL Azure サーバーの配置場所(地域設定)の考え方などは、 知っておいて損はないと思います。(SQL Azure に関しては、本当に日本語情報が少なく、現時点で、ここまで網羅的に整理されいてる情報は、この書籍しかないように思います) 

 ただ、注意点があります。SQL Azure データベースの最大サイズと課金体系がすでに変更されています。データベースの最大サイズは、この書籍では、50GBとなっていますが、現在、150GBまで拡張されています。最新の情報については、Microsoft 公式の Windows Azure デベロッパーセンターをご覧ください!…といいたいところですが、残念ながら公式も情報の更新が遅いので、この章を執筆された 大和屋さんのブログを参照してください!(課金体系の変更についてもすでに記事が紹介されています)

・大和屋さん(@SQLAzureJP)のブログ
 http://sqlazure.jp/b/

 さて、本書は、Windows Azure SDK の Ver 1.6 を前提として書かれており、2012/01以降に追加された情報については、別途、情報収集する必要があります。但し、各テクノロジーの根本的なアーキテクチャについてはそれほど変わることはないと思いますので、どこから学習し始めたらよいかわからない方は、まず本書をご覧になるのがよいと思います。

 個人的には、今後のクラウド開発のポイントは、管理の自動化と、ハイブリッド型クラウド開発への対応だと考えています。本書には、PowerShell (Azureコマンドレット)を使った管理や、オンプレミスとAzure環境をIPベースのVPNで接続する Azure Connect (現時点でCTP版)の設定方法についても紹介されています。現在、CTP版として提供されている新機能が正式リリースされるのが、本当に待ち遠しいです!

 私は、普段、ASP.NET アプリケーションや Silverlight アプリケーション開発をメインで担当していますが、インフラ面が非常に弱かったため、この本で、インフラ的な考え方も多く学ばせていただきました。